研究概要 |
本年度行なった研究成果の概要を以下に記す。 ・カイラルp波超伝導状態においては、外部から磁場をかけなくても電流と垂直な方向に電圧が生じる、いわゆる自発的なホール効果が起こる。この現象を、Bogoliubov-de Gennes方程式及び拡張されたGinzburg-Landau理論を用いて解析した。さらに、流体力学的な定式化を行ない、自発的ホール効果に対する定量的な評価を与えた。この理論は一般的であり、他の関連する現象に応用可能である。さらに、自発的ホール効果を検証する実験を提案した。 ・^3Heの超流動状態におけるスピン揺らぎのフィードバック効果を手本に、フィードバック効果の概念をカイラルp波超伝導状態に対して発展させた。この効果の定量的な大きさを評価した。 ・Ruを含んだSr_2RuO_4において絶対温度3度付近であらわれる不均一な超伝導状態に対する現象論を構築した。この理論は、これまで実験的に観測されたすべての特性を整合的に説明できる。理論を検証するための実験を、いくつか提案した。 ・スピン液体状態と反強磁性的長距離秩序状態の間の量子相転移を起こす量子スピン系に対し、乱れによる秩序形成(order-by-disorder effect)の問題を、stochastic series expansionの方法を用いて数値的に研究した。 ・(Ca,Sr)_2RUO_4やRNi_2B_2C(R=Lu,Tm,Er,Ho,Dy,…)における多バンド効果を、LDA+Uのバンド計算により調べている。これは、V.Anisimov博士とT.M.Rice教授との共同研究である。
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