研究概要 |
本研究では、主としてLa_<2-x>Sr_xCuO_4(LSCO)の単結晶試料,とくに低ドープ領域の反強磁性絶縁体相と超伝導相の境界領域に着目する。高圧を使って格子パラメータを異方的に制御し,きるだけ理想的な2次元系近づけるために,CuO_2面が平らな正方晶で超伝導-絶縁体転移の振る舞いを明らかにすることを目的とする。LSCOと本質的に同じ結晶構造をもつ正方晶のNd_<2-x>Ce_xCuO_4(NCCO)と比較も重要な知見が期待できる。平成12年度は次の事実を見出し,論文として公表でした。 1)LCCOにおいて不純物散乱はCuO_2面間(c軸方向)の電気伝導を助ける。 2)LSCOにおける斜方晶歪みは超伝導を抑制する効果がある。 3)LSCOでは異方的圧力を利用して斜方晶歪みを除いた正方晶の方が超伝導転移温度T_cが高い。とくにこの効果は,低ドープ側で顕著に見られる。 4)高圧正方晶相のT_cを外挿することにより,常圧正方晶相が得られたときの相図を書くことができた。この相図によれば,超伝導はSr濃度x=0.05近傍で超伝導体から絶縁体に移ることを示唆している。 5)LSCOの低ドープ領域で超伝導が消えたx=0.02で,トンネル効果を測定したところ,明らかにギャップ構造が観測できた。このギャップは,超伝導濃度領域の常伝導相で見られている擬ギャップとつながっているように見える. 6)電子ドープ系のNCCOの単結晶育成が自前の装置でできるようになり,格子定数,弾性率,常伝導電気伝導,超伝導転移温度などの測定を開始した。 今後,次年度の課題として,これらをより多くの実験データで確かなものにしていく予定。
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