| 研究概要 |
本研究は,La_<2-x>Sr_xCuO_4(以下LSCO)の単結晶試料,とくに低ドープ領域の反強磁性絶縁体相と超伝導相の境界領域に着目して,そこで見られる超伝導(運動量空間における凝縮)と磁気秩序/結晶格子の構造転移(実空間での秩序)との競合関係を実験的に調べようとするものである。成果の概要を以下にまとめる。
1.TSFZ法による低ドープ領域のLSCOの単結晶試料の作成条件,とくに単一ドメイン化の条件をほぼ確立した。また,ヨウ素滴定法で実験に用いた全ての試料の酸素量を評価して,実験データの質の向上をはかった。
2.ヨーロッパの中性子グループとも共同して,LSCOに見られる正方晶・斜方晶転移が,歪みの秩序化ではなく,原子変位型の転移であることを確かめた。
3.超伝導が消えた領域(x=0.02)のLSCOにおいても擬ギャップ構造化存在することをトンネル効果の実験から始めて確認した。
4.異方的圧力を利用して斜方晶歪みを抑制した実験結果の外挿から,常圧における正方晶LSCOに対する相図を描いた。超伝導転移温度T_cのキャリアー濃度xに対する振る舞いは,この境界は1次の超伝導-絶縁体転移であることを示唆している。この結果は,薄膜正方晶試料の振る舞いと矛盾しない。
5.超伝導-絶縁体転移点近傍で,圧力を用い超伝導性を抑制する(T_cを下げる)と,常伝導抵抗が低温で上昇する。この抵抗上昇は,CO_2面におけるキャリアの局在を示唆するもので,高温超伝導の発現は,2次元の金属的電子状態が重要であることを示す。
以上,具体的目標はほぼ達成し,今後,圧力下比熱測定など熱力学的検証がなされば,上記の解釈が確立する。
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