ペロブスカイト型酸化物Y_<1-x>Ca_xTiO_3の強磁性秩序と軌道秩序の相関(0<x<0.1)及び常磁性領域における金属非金属転移(x〜0.4)機構を支配する秩序変数の正体を調べる2つの目的のため、以下の実験を行い新たな知見を得た。 1.偏極中性子回折:x=0のYTiO_3は強磁性キュリー転移温度Tc=30Kのモット絶縁体であり、最近偏極中性子回折により反強的軌道秩序も生じていることが見い出された。我々はx=0.05〜0.15でこの軌道秩序パターンの安定性を調べ、x=0.05ではまだ反強的軌道秩序が存在することを見い出した。x=0.05〜0.10の磁気異方性が大きく変わる領域では、スピン秩序は残るが、軌道秩序の方は揺らぎが急激に大きくなる。 2.高分解能軌道放射光源X線回折:SPring-8で粉末法によりx=0.39の試料のX線回折を温度90〜300Kで測定した。120Kで室温と同じ型で格子定数がわずかに異なる斜方晶に2相分離していること、170K前後の金属非金属転移点で長軸格子長の跳び(〜0.01Å)が生じることを見い出した。この系において構造の異常が見い出されたのは初めてであり、金属非金属転移と密接な関わりがあることがわかった。 3.圧力下電気抵抗の測定:クランプ式で最高圧力1GPaまでの圧力下の電気抵抗測定を行い、x=0.39の金属非金属転移点の圧力依存性とその異方性を調べた。この系の電気抵抗は低温で金属、高温で半導体のいわゆる逆モット型を示すが、異方性は転移点前後でわずかな違いを示すだけで、概ね等方的である。転移点は加圧により次第に高温側へと上昇し、それとともに約0.4GPaで半導体的温度変化はなくなり、ヒステレシスも消失する。1次転移から2次転移に転移の型が変化していることを見い出した。
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