研究課題/領域番号 |
12046253
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
野口 悟 大阪府立大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (70180718)
|
研究分担者 |
石橋 広記 大阪府立大学, 総合科学部, 助手 (70285310)
川又 修一 大阪府立大学, 大学院・工学研究科, 助手 (50211868)
奥田 喜一 大阪府立大学, 大学院・工学研究科, 教授 (50028205)
会田 修 大阪府立大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30006457)
|
キーワード | 遷移金属酸化物 / 励起磁性 / ESR測定 / スピン転移 |
研究概要 |
基底-重項をもつ鉄族酸化物の励起磁性を強磁場ESR、低温X線回折、共鳴光電子分光の立場から明らかにする目的で、本年は特にLaCo03の強磁場ESR測定を行った。LaCo03は特異なスピン転移を示す系として古くから研究されているが、そのスピン状態については高スピン状態か中間スピン状態か、依然としてよく判っていない。我々は先ず、強磁場ESR信号強度の温度依存性を測定し、基底-重項からの励起エネルギーを評価した。次に、共鳴磁場の周波数依存性、角度依存性を測定し、有効スピンハミルトニアンで解析した。その結果、励起状態は基底-重項状態から約140Kの励起エネルギーをもつ3重項状態であることが判った。さらに、その3重項は4.90cm-1のゼロ磁場分裂を持つ一軸異方性を示し、g値が軸方向に3.35、軸と垂直方向に3.55と求まった。この結果は、高スピン状態がスピン軌道相互作用によって分裂した準位と考えて直ちに矛盾しないが、これから計算される帯磁率の大きさが実験結果のほぼ3倍となり、その説明が困難となる。一方、中間スピン状態についてはスピン軌道相互作用を考慮したエネルギー準位の計算がないため、現時点では直接実験結果を説明できず、理論的研究の発展が望まれる。このように、本実験結果は未解決のスピン状態の本質に迫る手がかりを与えるものと考えられる。現在、論文作成中である。尚、励起磁性を示す他の金属酸化物の合成、単結晶化、光電子分光測定に関しては来年度引き続き研究を行う。
|