研究概要 |
擬一次元構造を有するAV_6S_8(A=Tl,In,K,Rb,Cs)を合成して、電気抵抗率と交流帯磁率を測定した。合成法は以下のとおりである。TlV_6S_8は元素単体の混合物を800℃で反応させて得た。InV_6S_8はTlV_6S_8のTlをデインターカレートしてV_6S_8を得て、その中にInをインターカレートして得た。AV_6S_8(A=K,Rb,Cs)は、TlV_6S_8とアルカリハライドとのイオン交換法によって作成した。 電気抵抗測定は2Kまで行なった。TlV_6S_8とInV_6S_8は4-5Kでゼロ抵抗値を示した。V_6S_8とAV_6S_8(A=K,Rb,Cs)は2K以上ではゼロ抵抗を示さなかった。また、全ての試料において、150K付近に抵抗の山がみられた。CDW転移が生起しているものと考えられる。TlV_6S_8の予備的な電子回折測定によって、低温で超周期構造が観測された。 交流帯磁率はハートション法を用い、希釈冷凍機により0.02Kまで測定した。全ての試料が低温で完全反磁性を示し、試料全体が超伝導状態になっていることが明らかになった。Tcの値はTlV_6S_8,InV_6S_8,KV_6S_8,RbV_6S_8,CsV_6S_8に対して、それぞれ4.2K,5.2K,0.71K,0.65K,0.32Kであった。帯磁率の温度変化は焼結試料の場合には一段階の変化を示したが、粉末状態で測定すると二段階の変化を示した。これは粉末の表面効果によるものと解釈された。
|