研究概要 |
擬一次元構造を有するAV_6S_8(A=In, Tl, K, Rb, Cs)を合成して、電気抵抗と交流帯磁率の測定を行った。合成はまずTlV_6S_8を合成した。InV_6S_8はTlV_6S_8のTlをデインターカレートしてV_6S_8を作成し、それをInと反応させて得た。その他の化合物はTlV_6S_8とアルカリハライドとのイオン交換反応によって合成した。電気抵抗率は直流4端子法により273Kから2Kまで測定した。交流帯磁率はハートション法により0.02Kまで測定した。 これらの化合物は0.3Kから5Kの温度範囲に超伝導を示すことを前年度に見出している。さらに、超伝導転移が2段階で進行することを交流帯磁率で発見し、最初の転移は粒内での転移、次の転移が粒間の転移であると推察した。本年度は2段階の転移の機構を詳細に調べるために100ガウスまでのいろいろな磁場下での交流帯磁率を測定した。磁場の増加とともに帯磁率の絶対値は減少することが明らかになったが、磁場中冷却後、ゼロ磁場で測定してももとの価に戻らず、粒間に磁場が閉じこめられていることがわかった。今後の課題としては、粒子のサイズが不揃いであるにもかかわらず、2段階目の転移が比較的シャープに観測されるのはなぜかということがある。 KV_6S_8の電気抵抗を測定したところ、昇温測定時に300K付近で抵抗値が約3倍増加した。しかし帯磁率の温度変化には全く異常はみられなかった。これまでこの温度での相転移の報告はなく、今後、さらに詳しく検討する予定である。
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