研究課題/領域番号 |
12047203
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
滝川 昇 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00125600)
|
研究分担者 |
萩野 浩一 京都大学, 基礎物理学研究所, 助手
田澤 輝武 山口大学, 理学部, 教授 (80091198)
小野 章 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (20281959)
|
キーワード | 天体核反応 / 遮蔽効果 / 束縛電子 / 量子トンネル効果 / 半古典論 / 平均場理論 / 虚時間 / 非断熱遷移 |
研究概要 |
実験室での超低エネルギー核反応における標的核の束縛電子による遮蔽効果の研究をおこなった。まず、理論的枠組みとして、電子の時間発展と散乱核の相対運動を自己無撞着に決定する散乱理論を開発した。古典的に許される領域のみを記述の対象とするこれまでの同様な研究に比べ、我々の理論は、虚時間法を用いてトンネル領域における振る舞いもあからさまに取り扱うところに大きな特徴がある。その後、遮蔽効果の特徴を明らかにするために、理論的取り扱いが比較的簡単な、標的核に束縛される電子が一個である場合に、その理論を適用し、幾つかの定量的解析を行った。これまでに得られた主な研究結果は以下のとおりである。(1)入射エネルギーが比較的高い場合は、遮蔽効果の大きさは、いわゆる、瞬間トンネル近似での遮蔽エネルギーと一致する。(2)入射エネルギーが低く、トンネル領域が融合原子のボーア半径と同じ程度になる場合は、電子の影響は、ポテンシャル障壁の一様な低下では表現できない。(3)その一つの結果として、遮蔽効果の大きさは、従来慣例的に考えられてきた断熱極限での遮蔽エネルギーの値、つまり、標的原子と融合原子における電子の束縛エネルギーの差、より大きくなることがある。(3)古典領域のみを取り扱う従来の理論は、入射エネルギーがある程度高く、トンネル領域が、融合系のボーア半径より十分大きいときにのみ、遮蔽効果の正しい記述を与える。(4)電子の初期状態が全散乱系からみた場合励起状態にある場合には、トンネル領域において非断熱遷移が促進され、特に大きな遮蔽効果が期待される。これらの研究を進める際に、核反応中の束縛電子の時間変化に対するシミュレーションの結果を可視化した.これによって古典領域およびトンネル領域での電子密度の変化の視覚的把握が可能になった。
|