この研究の目的は、主に宇宙線研究所にあるスーパーカミオカンデで観測されている太陽ニュートリノのバックグラウンドの大きな部分を占める水中のラドンを減少させることにある。そのためにはスーパーカミオカンデの純水装置の中でラドンを放出、または取り入れている場所を特定し、それを除去する必要がある。特に重要なのは、場所の特定である。ところがスーパーカミオカンデの水の中のラドン濃度は極めて低く、通常の放射線計測器では感度が全く足りない。この研究では、そのような極めて低い水中のラドン濃度を計測する検出器を製作し、場所の特定を行うことにある。さらにはそのラドンが除去不能である場合には、中空糸膜モジュールを使用してラドンを取り除くことが考えられる。申請者の本年度の主要な実績は、1mBq/m3の感度を持つ大容積のラドン計を製作したことにある。この検出器を使用して、純水装置のいくつもの構成要素の間のラドン濃度を測定し、その結果ある装置に入っている樹脂からラドンが放出されていることが判明した。この測定は申請者の製作したラドン計なしには行えなかったものである。現在この事実をふまえ、樹脂を抜いてしまった。その結果、スーパーカミオカンデの水の中のラドン濃度は極めて低いレベルに押さえることができ、大きな成果をあげることができた。一方、中空糸膜に関しては、すでに設置が行われ、さらなるラドン低減が期待できる。次に対処しなくてはならないものは、スーパーカミオカンデ内部にある様々な構成要素からのラドン放出を調べなくてはならない。そのために新しくラドン計を購入し、その準備を進めつつある。
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