電子反跳の方向によるニュートリノの飛来方向の推定を目標に、多層式プラスチックシンチレータなどで電子の進行方向をある程度決定することを試みた。まず、コンピュータによるシミュレーションを系統的に行なった。その結果、プラスチックシンチレータ中では、クーロン多重散乱の影響がかなり強く、数MeV以下の電子エネルギーではそもそも電子の方向が明確に定まらないことが明らかになった。さらに、ニュートリノ・電子散乱の際の電子の反跳方向もこの程度の低エネルギーでは前方ピークがあまり顕著ではないので、いっそうの困難が予想される。今後は、プラスチックよりも有効原子番号の小さな物質の使用を念頭にさらに有効な方法を追求する。 暗黒物質のための原子核反跳検出器開発については、まずクエンチングファクターを簡単に測定する方法を開発することから開始した。従来、クエンチングファクターは加速器によって作られたエネルギーの決まった中性子ビームを用いて測定されるが、装置が大がかりでいろいろな検出器のクエンチングファクターを迅速に測定するのは簡単ではない。そこで、放射性同位元素^<252>Cfの放出する連続スペクトル中性子を用い、散乱された中性子の散乱角と運動エネルギー(TOF測定による)を決めてやることで実質的に単色中性子線を用いるのと同様にクエンチングファクターを決めることを試みた。コンピュータシミュレーションによる結果では、中性カウンタの寸法を最適化する必要はあるが、この方法の有効性が確認された。また、比較的簡単な、ガンマ線のコンプトン散乱を用いた予備実験をおこなった。今後^<252>Cfによる検証実験を行い、実際に特定のシンチレータのクエンチングファクターを決定したい。
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