研究課題/領域番号 |
12047224
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
鳥居 祥二 神奈川大学, 工学部, 助教授 (90167536)
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研究分担者 |
山上 隆正 宇宙科学研究所, 助教授 (40013718)
田村 忠久 神奈川大学, 工学部, 助手 (90271361)
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キーワード | ニュートリノ振動 / 大気ガンマ線 / 気球観測 / シンチファイバー / シミュレーション計算 / 大気ニュートリノ |
研究概要 |
大気ニュートリノ振動の定量的解明のためには、ニュートリノフラックスの絶対値に基づく研究が必要である。しかし、神岡実験のニュートリノフラックスの観測データをモンテカルロ計算と比較する場合に、計算に内在する不確定性のため、絶対値による議論がこれまでは難しかった。この不確定性の主なものは、一次宇宙線のフラックスと大気原子核との相互作用モデルである。これらの取り扱いが計算において正確であるかどうかを判定するためには、ニュートリノと同時に生成される二次宇宙線の高度変化を測定して、計算との一致性を確認する方法が有力である。この研究では、GeV領域の大気ガンマ線を気球高度で観測して、計算値との比較を行なった。 この目的で、これまで電子観測装置として開発されたBETS(Balloon borne Electron Telescope with Scintillating fibers)に、ガンマ線観測のための大幅な改良を加え、三陸大気球観測所(宇宙研)で2回の気球観測を実施した。その結果、15kmから32kmの高度にわたって、5つのレベルで5GeVから数10GeVの大気ガンマ線の観測に成功し、各高度でのエネルギースペクトルが求められた。この結果を、笠原(芝浦工大)が開発したCOSMOSコードを用いて、2種類の相互作用モデル(Lund Fritiof V1.6およびV7.02)による計算を行ない、観測データと比較した。その結果、従来用いられていたV1.6に比べて非弾性度が大きなV7.02の方が、乗鞍観測所(宇宙線研)での観測結果を含めて、良く一致することが明らかになった。BETSは、加速器によるビームテストによって、エネルギー測定や陽子除去などにおける系統的誤差はほとんど除かれているので、フラックスは統計誤差(約5%)の範囲で信頼できる。 今後は、ミューオン観測との関連性も考慮して、精度の高いニュートリノフラックスの計算を行なう予定である。
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