クオークとレプトンの質量と混合行列には著しい特徴がある。いずれも世代順に質量が十倍から数百倍も重くなっているが、質量比はアップ側・クオークが最も大きく、ダウン側・クオークと荷電レプトンは相対的に小さい。混合行列もクオークは非対角要素が小さいのに対し、レプトンでは大きい。このような特徴の違いは、統一理論と整合しないように見えるが、超弦理論を基礎にした統一理論では、登場する物質場の構造から混合が世代間を超えて起き、これらの特徴はむしろ自然に説明できることを本研究計画において明確にした。具体的には、SU(6)×SU(2)Rゲージ対称性と離散的なフレーバー対称性を持つ統一模型を採用する。まず、アップ側・クオークは、フレーバー対称性の直接的な結果として世代間の階層的質量が得られる。ダウン側・クオークでは、標準模型ゲージ対称性の下では同じ量子数を持つ別の物質場との混合が起こり、その結果、アップ側・クオークとは異なる階層的質量が導かれる。さらに、この混合によって質量行列の対角化に違いが生じ、これがCKM混合行列を導く。ダウン側における物質場同士の混合の強さは、フレーバー電荷で決まり、これを調節することで、実験値をほぼ再現できる事を示した。レプトンにおいても、別の物質場との混合が起こる。これに加えて、この模型の中性物質場には、中性物質場に特有のマジョラナ質量行列が登場するため、シーソー機構が起こり、中性場同士の新たな混合も生じる。これがMNS混合行列となり、第2-第3世代混合は大きく、第1-第2世代間は大混合角解と小混合角解の両方の解があることを示した。
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