重力崩壊型超新星爆発の際、中心に形成された原始中性子星の表面近傍の物質が、強いニュートリノフラックスによって吹き飛ばされていくいわゆるニュートリノ風のダイナミクスを、一般相対論的hydrodynamicsの計算コードを用いて計算し、重元素合成特にr過程元素合成が起こる条件を調べた。従来の定常流モデルに比べ膨張速度が速くなるなど、観測されているr過程元素の存在量を説明するために好都合な傾向が見られる一方、今回使用した簡略化したニュートリノフラックスのモデルでは、重くて小さい中性子星の場合でしか、観測を再現することが難しいこともわかった。 一方、Shen等に作成してもらった新しい状態方程式のテーブルを使い、野本グループとWoosleyグループ双方の星の進化モデルによる星のコアの一般相対論的球対称断熱重力崩壊のシミュレーションを実行した。その結果、コアの元素分布などが、従来のLattimer and Swestyの状態方程式を使用した場合と異なることが明らかになった。また、軽いコア(太陽質量の約1.4倍以下)では(断熱的)prompt explosionが起こり得るが、重いコアでは難しいことが確認できた。 さらに共同研究で、この断熱prompt explosionによって吹き飛ばされる物質中でおこる元素合成のネットワーク計算も行った。その際、電子捕獲による電子数の変化はダイナミクスとは独立に計算したが、以前行なわれた研究のように時間変化を仮定するような手法はとらなかった。その結果、観測に合うようなr過程元素が合成され、prompt explosionがr過程元素合成の候補地であることを示すことができた。今後は、これらに対するニュートリノ振動の影響を調べていかなければならない。
|