吐き出し時にMA⇒JCニューロン間のIPSPを抑制する修飾ニューロンは、一連の研究から、脳神経節に細胞体が存在し、口球神経節と連結するCBC神経に軸索をのばしていると考えられる。これまで、CBC神経の断端から逆行性に染色し、脳神経節内に十数個のCBニューロン細胞体を見い出した。この中には修飾ニューロンだけでなく、摂食、吐き出しの司令様ニューロンも含まれると考えられる。そこで吐き出しに関わるニューロンを探すため、海藻味刺激に伴うニューロンの応答を調べる必要があるが、これら細胞体はかなり小さく、微小電極法を用いることが困難であった。そこで、ニューロンのスパイク活動をモニターできるカルシウムイメージング法を用い、海藻味刺激に伴うニューロンの応答を調べた。その結果、脳神経節Mクラスター内に細胞体を持つニューロンの1タイプが、摂食味刺激に比べて吐き出し味刺激でよく応答することをすでに見い出した。本研究ではこの継続として、このタイプのニューロンをきちっと同定し、実際にMA⇒JCニューロン間のIPSPを抑制するかどうかを調べることを目的とした。 Mクラスター内に細胞体を持つ4個のCBニューロンのうちの一つCB_M1ニューロンは、両側のCBC神経へ軸索をのばし、FaGlu固定法により蛍光を発してカテコールアミン類を含有すると考えられる。またCB_M1はMA、JCニューロンに単シナプス性EPSPを誘発した。今回、口唇への海藻味刺激により、CB_M1には摂食、吐き出し味刺激で放電活動が誘発されるが、常に吐き出し味刺激の方が大きく活動することがわかった。また、CB_M1の放電によりMA⇒JCニューロン間のシナプス伝達は大きく抑圧された。さらに外液への10^<-6>Mドーパミン添加によりほぼ同程度のシナプス抑圧がおこることも確認した。これらの結果、CB_M1が目的とする修飾ニューロンであることが示唆された。
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