研究課題/領域番号 |
12048219
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研究機関 | 福岡女子大学 |
研究代表者 |
小泉 修 福岡女子大学, 人間環境学部, 教授 (50094777)
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研究分担者 |
美濃部 純子 福岡女子大学, 人間環境学部, 助手 (80190718)
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キーワード | 散在神経系 / ヒドラ / 神経活性物質 / パプチド / NO / 免疫組織化学 / 比較神経生物学 / 進化 |
研究概要 |
(1)神経活性物質の起源と進化:我々は、神経伝達物質の起源はペプチドで古典的な伝達物質は後に現れたと言う仮説を立てている。更に、新しいタイプのシグナル分子であるNO系について、ヒドラの神経系での存在・役割を検討した。その結果、NO系はヒドラには存在するがその局在は、神経系ではなく上皮・筋肉系であることを実証できた。 (2)ヒドラのペプチド分子の一般性:ヒドラで見つかった神経ペプチドGLWamide familyは、その抗体染色により非常に多くの動物の神経系に存在することが示唆できた。大型のハエ(blowfly)では、数対の大型神経細胞が脳において明確に染色された。哺乳類では、辺縁系の限られた少数の神経細胞に見られた。更に消化管においても、腸管の神経集網においてみられた。脊椎動物については、サル、ラット、マウス、などの哺乳類のみならず、ニワトリ(鳥類)、ヒキガエル(両生類)、メダカ(魚類)など広範な動物種で見られた。更に、ウニ、ヒトデなどの原始的な後口動物でも見られた。線虫では遺伝子の検索により1つのGLWamide前駆タンパク質が見つかった。 (3)ペプチド性シグナル分子の大規模検索:このペプチドプロジェクトにより、i)ペプチド分子は神経情報伝達の働きのみならず発生生物学的な活性を含んだものが多数ある、ii)ペプチド分子は神経細胞に局在する神経ペプチドのみならず、上皮筋細胞に局在する上皮ペプチドもたくさんある、等の考えが明確になった。 (4)神経回路網形成の分子機構:神経ペプチドの分化を促進する神経ペプチドHym355については、2000年にその結果がDevelopmentに掲載・発行された。現在神経分化を抑制する上皮ペプチドLPW familyについて論文を準備中である。更に、これらのペプチドの活性測定のためにin vivo系を使っているが、非常に大変であるため、神経細胞の細胞培養系の確立を目指し、短期間(2days)については、系をほぼ確立できた。 (5)散在神経系の構造:我々の得た神経ペプチドの抗体を用いて、ヒドラの神経系の化学解剖学を行った。感覚細胞はペプチド発現に関して各部位では均一で、神経節細胞については対照的に様々に異なったペプチドを発現する雑多な集団であることが判明した。また、定性的のみならず定量的な解剖図も作成できた。
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