研究概要 |
弱電気魚は電気器官からの放電(EOD)と電気感覚系での受容を基盤にして,様々な社会的行動を学習・形成する。本研究は,パルス型放電種である弱電気魚モルミルス(Gnathonemus Petersii)を研究対象として,社会的な行動と電気感覚系の可塑的神経活動との関係解明を目的とする。 1、自由遊泳下におけるEOD記録:エコー行動とは相手魚のEODから一定の間隔で放電することをいい,混信回避行動の一種である。遊泳に伴うEODの変化を知る目的で,水槽に2本の記録電極を置き,単独あるいは2匹のモルミルスの遊泳中のEODを記録した。単独遊泳中の記録は,個体によりEOD振幅,頻度,放電パターンに差があり,個体間で相互に識別出来る可能性があることを示唆した。2匹遊泳では,パターン化された攻撃行動があり,EOD振幅・頻度の変化,方向性から,相手魚の位置,動きなどが検出されていることが示唆された。また混泳時には先住魚優位の傾向があり,電気的定位・交信共に,新たな状況が常に記憶されていることを示していた。 2、電気感覚葉(ELL)における電気的活動と情報変換過程の解析:3種類の電気受容系が特異的情報を並列に処理する背景には,受容器の構造的な違いに加えて,自己EODのモニター情報であるEOCDとの相互作用がある。広域周波数に応答するモルミロマスト電気受容器系はELLのMZおよびDLZに投射する。EOCDおよび抑制性介在ニューロンの二次感覚ニューロンへの修飾作用についてスライス標本を用いホールセル記録下で調べた。EOCDおよび上位中枢からの平行線維によって,二次LGニューロンの発火は誘発されるが,介在ニューロンにより強く抑制され,スパイク発生は数発に調整されていた。二次感覚ニューロンの活動は一次感覚葉レベルでON,OFF二つのイメージに変換されていることが示唆された
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