研究概要 |
1)キイロショウジョウバエ幼虫の背側縦走筋m1、m2から記録される興奮性接合部電位(EJP)は還流投与したチラミンによって濃度依存的に減弱、逆にオクトパミンによって増強した。チラミン受容体遺伝子TyrRのP因子挿入突然変異honoではチラミン効果が選択的に消失した。honoの復帰体ではチラミン効果がほぼ完全に回復した。79C-D領域欠失突然変異のヘテロ接合体(Df/+、ホモ接合体は致死)ではチラミン効果が消失した。honoの異型接合体(hono/+)ではチラミン効果の大きさはhonoの同型接合体と野生型との中間となり、遺伝子量効果を示した。これらの結果は、チラミンによるEJPの減弱作用は79C-D領域に存在するチラミン受容体遺伝子TyrRの産物によるものであることを示す。 2)3令幼虫の中枢神経系を免疫組織化学染色したところ、抗チラミン抗体陽性ニューロンは脳、食道下、胸部、腹部の各神経節にみられた。染色パターンは抗オクトパミン抗体陽性ニューロン(Monastrioti et al.,1995)とは異なっていた。食道下と胸・腹部神経節には各3個のVUM(ventral unpaired median)ニューロンが存在し、各ニューロンの軸索は背側で両側に分岐して側神経から末梢に伸びていた。腹部ではその神経終末が背側縦走筋m1、m2に到達していた。これらの結果は、キイロショウジョウバエにはチラミン作動性ニューロンが存在し、かつその神経終末が背側縦走筋m1、m2に到達していることを示唆する。 以上の結果はチラミン-チラミン受容体系がキイロショウジョウバエにおいて神経伝達物質-受容体系として働いていることを示唆する。
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