研究概要 |
昆虫微小脳では、記憶に関係する視覚情報の視葉から前大脳へ経路としては,lobulaを経由する情報が重要であると考えられるため、前大脳への投射域をlobula neuronの形態と対応させて明らかにする目的で、まず、鱗翅目昆虫のlobulaの形態を明らかにするとともに、免疫染色した共焦点顕微鏡観察像と,準超薄連続切片による画像を解析し,脳内ニューロピルの立体配置を調べた.次に、lobulaのretinotopicrelayneuronについて、コバルト染色法,Golgi染色法,Bodian染色法,蛍光色素注入法のデータを多面的に解析し、それらの形態的特徴と前大脳への投射域を調べた。その結果、1)視葉のlobulaにはすくなくとも5層のシナプス層がある。2)lobulaには、側枝を出す層、その長さなどが形態的に異なる少なくとも4種類のretinotopicなrelay neuronがある。3)それらはそれぞれ、前大脳背側部の前方と後方の狭い領域に分かれて投射することがわかった。さらに、それらの領域からほかの部域へ連絡するneuronを検索したところ、前大脳前側部には、樹状突起の形態が入力型を示すneuronと共に、出力型を示すneuronも観察された。前大脳後側部からの出力neuron-を観察することはできなかった。視葉へ軸索をのばす遠心性ニューロンが情報を入力する部域をGolgi標本の精査により同定し,その部域とlobula neuronが終末する部域の形態的特徴と準超薄切片画像による特徴を比較解析し,電子顕微鏡観察への足がかりを得た.
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