4500系統のエンハンサートラップ系統をスクリーニングして特異的な神経線維群をラベルする系統を探索し、匂い刺激の一次感覚野である触角葉と、嗅覚・視覚など異なった刺戟種の情報が初めて集合する脳領域である側角とを結ぶ線維群を染める系統を、46系統見いだした。うち21系統について、細胞の形態を詳しく解析した結果、各系統がラベルする線維の触角葉内の投射構造と、キノコ体calyxや側角での投射構造には一定の相関があり、calyxや側角への入力に部位特異性が存在する可能性が高いことが分かった。またcalyx・側角での投射終末は、幼虫での分枝が蛹初期にいったん退縮し、再び伸長し直すという再編成過程を取ることが分かった。 これら神経束がどのような順序で伸長してくるのかを解析する方法として、サンゴ赤色蛍光色素DsRedの一部のアミノ酸を入れ替えた改良型蛍光色素遺伝子DsRedS197Yを、任意のGAL4系統で発現させる系を作成した。この改良型DsRedは野生型DsRedより明るいうえ、GFPと干渉する緑波長域での蛍光が少ないので、GFPとの共発現に特に適している。GFPはタンパク産生後数時間で緑の蛍光を発するのに対し、DsRedS197Yは数十時間経たないと赤の蛍光を発しない。両者を共発現させると、出来たばかり、あるいはGAL4発現が始まったばかりの細胞の線維は緑だけで光り、古い線維は緑と赤の両方で光るので、線維束の中のどの部分が新しい線維かを推定できる。キノコ体でパイロット実験を行なったところ、幼虫期のpedunculusとlobeでは、線維は新しいものほど内側を走っていることが分かった。
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