研究概要 |
ミトコンドリア形態異常はミトコンドリアの機能異常を反映するものとされており,ヒトのミトコンドリア病の診断指標の一つとされている.我々はウサギにおいてミトコンドリアの形態異常を伴う遺伝性感覚神経症を新たに見出した.本年度はその病態の病理学的解析を中心に行うとともに,ミトコンドリアの遺伝子異常について分子生物学的に検索した.本疾患の病理学的特徴の一つは,中枢から末梢の広域にわたる種々の程度の神経線維変性であった.病変は脊髄背根,脊髄および脳幹白質,大脳視床部において高度にみられた.このことから本疾患が中枢から末梢の感覚神経路に存在する系統変性疾患である可能性が示唆された.また,もう一つの特徴である神経細胞内好酸性封入体について免疫組織化学的に検索した.抗ミトコンドリア抗体による検索で,この封入体に一致して陽性所見が得られるとともに,大型化したミトコンドリアの蓄積が中枢神経系の様々なレベルで観察された.また,電子顕微鏡学的には巨大化し,内部にオスミウム好性の円形あるいは針状構造を有するミトコンドリアの蓄積を観察した. また,分子生物学的には発症例の脊髄よりミトコンドリアDNAを抽出し,long-PCRおよび全塩基配列の塩基配列解析を行った.現在までのところ,ミトコンドリアDNAの大きな欠失,重複あるいは点変異や欠失はみられていない. 本年度ではモデル動物化のために必要なキャリヤー動物の作出や蛋白化学的な解析に必要な発症例の作出が順調に進まなかったこともあり,これらに関しては来年度に実施を予定している.
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