研究概要 |
本研究は、マボヤオタマジャクシ(遊泳幼生)脳内のメラニン色素の質と量を人工的にコントロールし、色素細胞と個体の行動の連携機構を解析する端緒とすることを第一義的な目的としている。 今年度はマボヤ脳内色素細胞特異的に目的とする遺伝子を発現させ、メラニン量を増減させられるように、当該細胞で特異的に発現する、マボヤチロシナーゼとTRP(tyrosinase-related protein)遺伝子の転写調節領域の解析を詳細に行うことにした。これら遺伝子はすでに我々のグループがクローニングしているものを用いた(Sato et al.,1997、1999)。 レポーターとしてβ-galactosidasc遺伝子を用い、この上流に上記色素産生に関わる遺伝子の調節領域をつなぎ、マボヤ受精卵にマイクロインジェクションし、尾芽胚期に固定し、レポーター遺伝子産物の発現を検出した。その結果チロシナーゼ遺伝子の上流については、最初のMetをコードするATGのAから150bpあまり上流までがその特異性を決めるために必須であることを見つけた。興味あることに1.8kb上流までには、脊椎動物のチロシナーゼ遺伝子に保存されたシスエレメントは認められなかった(Toyodaら、2000)。しかしながら脊椎動物のチロシナーゼ遺伝子上流で保存はされているものの顕著な転写調節活性が認められない配列が、マボヤ色素細胞特異的な発現を強く増強することを発見した。TRP遺伝子についてはその上流解析が容易でなく、これまでのところ色素細胞特異的な発現を保障するある領域を検出するところまで進展した。
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