痛みは化学的・熱・機械的刺激によって感覚神経終末が活性化されることによって惹起されるが、遺伝子クローニングされたカプサイシン受容体(VR1)はカプサイシンのみならず痛みを惹起するとされる熱(43度以上)や酸(プロトン)によっても活性化されることが明らかとなり、また、そのホモログVRL-1がより高温(52度以上)の熱によって活性化される新たな痛み受容体であることが明らかになった。高温刺激によって活性化する2つの熱受容体が明らかになったが、高温刺激のみならず低温刺激(約10度以下)も痛みを惹起することから、本申請では、温度感受性を中心として感覚神経終末での痛み受容機構を明らかにすることを目的として申請した。研究計画に挙げた「熱受容体がヘテロマーを形成する可能性の検討」は発現パターンの解析と共発現系での機能解析によって否定された。第2の計画である「VR1、VRL-1のホモログの検索」では、現在のところ見つかっていない。第3の計画「冷刺激受容体の発現クローニング」は現在遂行中である。これらの計画の他に、疼痛発生の分子機構を解析する目的で、VR1活性の制御機構を検討した。その結果、プロトンによるVR1活性の制御に重要な細胞外ドメインのアミノ酸を同定した(論文発表)。また、炎症関連メデイエイターの1つである細胞外ATPのVR1活性に対する作用を検討した結果、これまで知られているイオンチャネル型(P2X)受容体のみならず代謝型(P2Y)受容体にも作用してPKCの活性化を介してVR1活性を制御していることが明らかとなった。これは、ATPによる全く新しい疼痛発生メカニズムとして注目される(論文はunder revision)。
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