研究課題/領域番号 |
12050211
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
郭 伸 東京大学, 医学部・附属病院, 助教授 (40160981)
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研究分担者 |
後藤 順 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (10211252)
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キーワード | グルタミン酸受容体 / 筋萎縮性側索硬化症 / 脊髄運動ニューロン / RNA編集 / GluR2 / AMPA受容体 |
研究概要 |
我々はALSの脊髄前角にグルタミン酸受容体サブタイプであるAMPA受容体にCa^<2+>透過性を亢進させる分子変化が生じていることを報告し、とくにGluR2 mRNA編集率の低下はALSに疾患特異的な変化であり、本疾患の神経細胞死に関わっている可能性が高いことを示した。本研究では、この変化のALSの病因との関わりをより明らかにするために、上記の分子変化の有無をALSおよびモデル動物の単一運動ニューロン組織について検討した。ラット脊髄クモ膜下腔に微小浸透圧ポンプを用いてカイニン酸を2ヶ月間投与したモデルを用い、rotarodにより運動機能低下のみられたラットを人工髄液を投与したラットを対照としてmRNA発現の変化を検討した。取り出した脊髄凍結切片よりレーザーダイセクター(浜松フォトグラフィクス社)を用いて単一細胞を切りだし、RT-PCR、PCR産物の制限酵素処理を行いGluR2 mRNAの編集(RNA editing)率を測定した。ALSモデルラットは、20-30%で2-5週以降に後肢の運動機能低下を示した。切り出した単一運動ニューロンでは、対照群では全てのRT-PCR産物が検出できたのに対し、カイニン酸投与群ではG3PDHは全ての細胞でRT-PCR産物が検出できたが、GluR2は約半数のみであった。検出されたGluR2 RNA編集率は全て100%であった。凍結保存ALS患者の脊髄についても同一の方法により検討した結果、正常対照ヒト脊髄運動ニューロンではGluR2 mRNA編集率がほぼ100%であるのに対し、2症例のALS運動ニューロンでは平均50%以下に低下していた。GluR2 mRNA編集率の変化は、脊髄運動ニューロンに生じていることを示し、ALSの運動ニューロン死へのAMPA受容体の分子変化の関与を支持する更なる知見を得た。カイニン酸の髄注によりALS類似の脊髄運動ニューロンの変性を引き起こし、GluR2 mRNAのdown-regulationが起こっている可能性を示した。
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