<経緯> 筋強直性ジストロフィーは、常染色体優性遺伝の形式で発症する遺伝性筋変性疾患である。筋変性だけでなく、知能低下を含む全身的な症状を現すことを特徴とする。我々はDMのモデル細胞として、マウス筋芽細胞C2C12細胞株にDMPK遺伝子を導入し、安定に発現させることに成功した株を保持している。この細胞にメチル水銀を添加すると、酸化ストレスを介した細胞死が引き起こされる。よって本研究では、一般的な酸化剤を細胞に添加し、その感受性を測定すると共に、遺伝子、タンパク質のレベルでの相違をみるために、タンパク質二次元電気泳動法、ノーザンブロッティング法による解析を行った。 <研究成果> 本研究では、過酸化水素とメナジオンを酸化剤として用いた。DMPK導入細胞では両試薬共に、コントロール細胞(C2C12株)に比べ、より低濃度で細胞死が誘発された。これにより、先行実験で見られたメチル水銀による細胞死が、より一般的な酸化剤添加によっても起こることが確認された。またDMPK導入細胞では、特にメナジオンに対して感受性が高いことも示唆された。一方でノーザン解析の結果では、過酸化水素のスカベンジャーであるカタラーゼの発現量がDMPK導入細胞で特に上昇していた。これらのことから、DMPK導入細胞では、過酸化水素を介した酸化ストレスに対する耐性機構は正常に機能しているものの、メナジオンを介した酸化ストレスに対しては特に高い脆弱性を示す可能性が示唆された。 また、二次元展開では、DMPK導入細胞とコントロールとで発現量に差のあるタンパク質スポットも確認された。これらの同定を急ぐと共に、同定されたタンパク質が上記の酸化ストレス脆弱性にどのように関与しているか、今後明らかにしていきたい。
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