研究課題/領域番号 |
12050221
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
千田 隆夫 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (10187875)
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研究分担者 |
藤本 豊士 名古屋大学, 医学部, 教授 (50115929)
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キーワード | 癌抑制タンパク / APC / シナプス / NMDA受容体 / クラスタリング / PSD-95 / Asef / ICAT |
研究概要 |
癌抑制タンパクAPC(adenomatous polyposis coli)の脳での発現は高く、ニューロンの細胞体、線維、終末のいずれにも分布した。ラット海馬由来培養ニューロンでは、培養3週目にAPCが神経終末と樹状突起棘に凝集した。シナプス後部のpost-synaptic densityにおいて、APC、PSD-95、NR2A(NMDA受容体のsubunit)が共存し、複合体を作っていた。シナプス膜における受容体/チャネルレのクラスタリングに、APCとPSD-95の結合が重要であることを検証しようと試みた。APCとPSD-95の相互作用を阻害するドミナントネガティブ分子(APC-C17)に転写調節因子antennapediaの細胞膜透過ドメインを結合して、培養ニューロンに導入する方法を検討した。antennapedia細胞膜透過ドメインを付加した分子(ant-APC C17)をデザインし、これを大腸菌において組み換えタンパク質として発現させ、純度90%以上に精製することができた。APCに低分子量Gタンパク質Racの活性を制御するGEF分子Asefが結合することがわかった。APCが結合するとAsefは活性化して、アクチンネットワークの再編成を引き起こし、細胞の運動能が促進した。DLG/PSD-95との結合部位を欠いた変異APC(APC1638T)を発現するトランスジェニックマウスは、発育遅延、生殖器異常などと共に運動失調症状を呈した。APC1638Tマウスの脳では、PSD-95・NMDA受容体複合体にAPCが含まれていなかった。微細形態観察によって、小脳皮質シナプスのpost-synaptic densityの厚みの減少とAPCの局在異常が認められた。β-cateninと複合体を形成してWntシグナル系を抑制するICAT(Inhibitor of β-catenin)のノックアウトマウスでは、脳形成異常(前脳形成不全、外脳症、中脳・海馬の過形成)、眼球形成不全、頭蓋骨形成不全、腎臓欠損が見られた。
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