代謝型グルタミン酸受容体2型(mGluR2)をプロモーターとしてヒト・インターロイキン受容体2型(IL2R)と蛍光タンパク(EGFP)の融合タンパク(IL2R/EGFP)を発現するトランスジェニック・マウスを用いて、以下のような実験系を確立した。 1.このトランスジェニック・マウスの小脳ではゴルジ細胞特異的にIL2R/EGFPが発現する。IL2R特異的なイムノトキシンを小脳に局所投与するとゴルジ細胞が選択的に脱落する。これにより、ゴルジ細胞が小脳機能に必須であることを明らかにしてきた。ゴルジ細胞の機能をsingle cellレベルで解析するために、スライス標本上で、EGFPの蛍光を指標としてゴルジ細胞を確実に同定し、パッチクランプ法によりに解析する実験系を確立した。パッチクランプ法により、興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸入力に対して、ゴルジ細胞がグルタミン酸受容体(AMPA型受容体・NMDA型受容体・代謝型受容体)を介して多様な応答をすることを示した。 2.さらに基底核線条体及び網膜を使った実験系を確立した。イムノトキシンにより、基底核線条体・網膜よりそれぞれコリン作動性インターニューロン・コリン作動性アマクリン細胞を選択的に欠失させ、その機能を解析した。これにより、(1)黒質緻密部ドーパミン作動性ニューロンの機能低下により生じるパーキンソン病に抗コリン作動薬が効果があることが知られているが、このアセチルコリン調節系の実体が線条体コリン作働性インターニューロンによるものであること、(2)網膜内の神経ネットワークの情報処理過程で、光の動きに対して方向選択性が生じるが、これにコリン作動性アマクリン細胞が必須であることを示した。 以上の実験系の確立により、小脳皮質はじめ基底核線条体・網膜の局所神経回路におけるインターニューロンの調節機構をさらに解明する。
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