フェレットは、視覚系回路の発達過程の解析に優れた実験動物である。しかし、その入手は、米国からの輸入に100%依存していたため、たとえ小規模であっても国内で維持生産することが、今後の研究を遅滞なく進める上で重要と考えた。そこで、飼育ケージの改良等、飼育環境の整備を行い、飼育経験を蓄積しておこうというのが本研究の一番の目的である。主として以下の研究と作業を行い成果を得た。 (1)国内の企業で維持されていたフェレットのコロニーを譲りうけ、繁殖を開始した。2000年春より数回にわたって繁殖に成功し、2002年2月の時点で、2施設合計で(♂13匹、♀30匹)が維持されている。岡山大学医学部では、ネコ用の飼育架台を改造してフェレット専用の流水架台を設置し、飼育環境の改善を達成した。その他いくつか問題点が残されてはいるが、国内での繁殖コロニーの樹立に成功した。 (2)ネコ用定位台を部分的に改造し、フェレット用の脳定位台を試作した。ネコ用の口枷をフェレット左右canine(犬歯)間に収まるように細く削り、さらにear bar先端を削った。頭蓋骨標本をこの定位台に固定して基準面を定めた上で、固定したフェレット頭部を露出し、脳表面に目印をつけ、stereotaxic coronal sectionの作成を行なった。シオジリンE10により包埋し、嗅球前端から小脳後端までの連続切片を作成し、ニッスル染色を施した。画像は、CCDカメラにて取り込みphotoshopで組み写真とした。今後、sagittal、horizontalのsectionを作成するとともに、成果を順次公開の予定である。 (3)出生直後の新生児に種々の操作を施す際の母親にるcannibalismを避けるために、ラット用の人工保育法をフェレット用に改良した。母親から新生児を引き離して、丸3日間人工哺乳器による哺育に成功した。
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