研究概要 |
多重電極により計測されたニューロン活動の解析手法を開発し,個々のニューロンが発するスパイクの,時間的にどの程度鋭い構造を神経システムが用いているか調べる方法を提案した.具体的には,まず始めに,実際に観測されたデータを,ある時間△ms間隔で刻み,個々のスパイクをその区間内でランダムに移動した。このようにして,一見もとのスパイク系列と区別できないデータを多数作った.そしてこれらのデータ群から導きだされた統計量と実際に観測されたデータからの統計量の分布が有意に異っているかどうか調べた。これで帰無仮説「各ニューロンの発火頻度は△msでは変わらない」が検定できる.パラメータ△は例えば5ms,10ms,30msなど実験者が指定した.ここで問題は,どのような統計量を用いるかである. スパイク系列の解析手法のほとんどは二つのスパイク系列の独立性を検定するものである.この場合,スパイク系列が独立で同一の確率過程から発生されたことを仮定する必要がある.我々の手法は,そのような強い仮定をまったく必要としない.そこで,本年度は,具体的な統計量として,異なるニューロンから発せられたの二つのスパイク間隔(二次の統計量)を用い,サルの運動野M1から計測されたデータの解析をおこなった.つまり,これまでの解析と同一の統計量を用いるものの,異なった仮説で検定をおこなった.この解析結果を第30回北米神経科学会大会において発表し,本手法の有効性を示した.
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