いもち病菌ならびに白葉枯病細菌感染時におけるマンノース結合型イネレクチン(MRL)遺伝子の発現様相と感染組織におけるMRLタンパク質の局在性、存在様式を明らかにすることにより、MRLの病害抵抗性における機能を検証することを目的に行った。その成果の概要を以下に記す。 1.MRL遺伝子・産物の発現様相 MRL4.85遺伝子をプローブとしてMRL遺伝子の発現様相を調べたところ、 ・ 水耕栽培した健全イネでは根にわずかに発現していたものの、茎葉部では発現していなかった。ポット栽培したイネではいずれの部位でも発現していた。 ・ 水耕条件下で、アブシジン酸、ジャスモン酸、塩(0.15MNaCl)、プロベナゾール、BTH処理で、MRLの発現は誘導されたが、オーキシン、エチレン処理では誘導されなかった。 ・ 付傷、水分ストレス、37℃高温処理等のストレス条件下、いもち病菌感染によっても急速かつ継続的に発現した。ただし、R、Sの組合せに時間的、量的に顕著な差は認められなかった。白葉枯病細菌感染においても同様の傾向が認められた。 ・ MRL抗体によるELISA検定では、いもち病菌感染により逆にMRLタンパク質の検出量は経時的に急減した。このことは感染により、MRLが不溶・沈着化しているものと推察された。 2.圃場抵抗性の異なるイネ品種間におけるMRLの発現差異 イネいもち病菌/白葉枯病細菌に対する圃場抵抗性の異なる品種全てにMRL活性は検出され、その抵抗性の強弱と必ずしも明確な相関は認められなかった。 3.MRLのイネ葉における存在部位と感染による変動 免疫染色では維管束系、表皮細胞、葉肉細胞に広く分布していたが、機動細胞および穂ではほとんど検出できなかった。いもち病菌感染時には感染部位周縁に集積する傾向が観察され、白葉枯病細菌感染導管において、予備的にFMとMRL抗体は反応した。
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