エリシターの受容とオキシダティブバーストの分子機構とその機能

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12052212
• 研究種目: 特定領域研究(A)
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 道家 紀志 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (80023472)
• 研究分担者: 渋谷 直人 農林水産省, 農業生物資源研究所, 部長(研究職)
• キーワード: オキシダティブバースト / 受容体 / グルカンオリゴ糖エリシター / ホスホリパーゼD / NADPH酸化酵素 / gp91phoxホモログ / リン酸化-脱リン酸化制御

研究概要

植物細胞・組織が寄生菌等の成分を異物認識し、その情報を感染に対する防御応答の発現につなげるシグナル伝達とシグナル増幅の意義をもつ急速な活性酸素生成反応(オキシダティブバースト:OXB)の分子機構と機能の解明の一貫としてエリシターと受容体の分子相互作用とOXBシステムの分子基盤とその活性制御機構を調べた。イネグルカン系エリシターの受容体解析に利用するため、高活性を示す新規のグルカンオリゴ糖エリシターを探索した。イモチ病菌細胞壁グルカンの酵素分解物から、新規のグルコ5糖エリシターを単離精製し、この5糖がこれまでに特性を明らかにしたものと異なる新規かつ高活性なイネ細胞に対するエリシターであり、受容体解析での有用性を示した。イネ細胞におけるエリシターにより誘導される活性酸素生成の制御機構について検討し、エリシターによるホスホリパーゼDの活性化がNADPHオキシダーゼを介した即時型の活性酸素応答制御に主要な役割を果たし、また、この上流および下流にそれぞれ蛋白キナーゼを介した制御過程が存在していることを示唆した。植物細胞のインタクトな状態の組織・細胞ではOXB応答能はなく、感染菌の分泌物や傷害刺激により10数細胞の範囲でde novoに獲得され、その獲得過程には、OXBを担う原形質膜内酵素のNADPH酸化酵素の活性化に関わるカルシウムーカルモジュリン依存、蛋白キナーゼの活性レベルの上昇があることを示唆し、応答能を獲得した細胞ではリン酸化-脱リン酸化反応の回転状態で応答待機状態にあることを示唆した。OXBを担う酵素の活性中心となるタンパク質(gp91phoxホモログ)の遺伝子Strboh AおよびStrboh Bをクローニングし、推定アミノ酸配列からタンパク質の性質を推定した。これをプローブとしたノーザン解析の結果、StrbohAの常時発現、StarbohBのエリシター応答発現が判明した。また、局部的OXBの発生により発信する細胞間情報伝達においてカルシウムインフラクスの細胞間連鎖反応の存在を示唆した。

研究成果

• [文献書誌] Yamaguchi,T.: "Differences in the recognition of glucan elicitor signals between rice and soybean : b-glucan fragments from rice blast disease fungus Pyricularia oryzae that elicit phytoalexin biosynthesis in suspension-cultured rice cells."Plant Cell.Physiol.. 12. 817-826 (2000)
• [文献書誌] Okada,M.: "Identification of a high-affinity binding protein for N-acetylchito-oligosacharide elicitor in the plasma membrane from rice leaf and root cells."J.Plant Physiol.. 158. 121-124 (2001)
• [文献書誌] Yamaguchi,T.: "Pligpsaccharide elicitors and their receptors for plant defense response."Trends Glycosci.Glycotech.. 12. 113-120 (2000)
• [文献書誌] Ito,Y.: "Receptors for the microbial elicitors of plant defense responces.Plant-Bicrobe Interactions, vol 5.Edited by G.Stacey and N.Keen"APS-Press. 269-295 (2000)
• [文献書誌] Doke,N.: "The oxidative burst in plants : mechanism and function in induced resistance.Delivery and Perception of Pathogen Signals in Plants.Edited by N.Keen et al."APS Press. 268 (2000)