研究概要 |
グラム陰性細菌の細胞表層を形成するリポ多糖(LPS)のイネ培養細胞に対する作用を調べ、LPSが細胞死を伴う防御応答を強く誘導するエリシターとして作用することを明らかにした。このエリシター活性にはLPSの糖鎖部分が必要であり、過ヨウ素酸酸化により糖鎖部分を分解するとエリシター活性は完全に失われた。菌類由来のエリシターであるβグルカン断片に対するイネ受容体を探索し、エリシター誘導性遺伝子の中にβグルカン受容体の可能性を確認した。この遺伝子が作る受容体キナーゼを大腸菌で発現し、特異抗体を作成し、細胞内ドメインが自己リン酸化活性をもつことを示した。各種のエリシターで処理したジャガイモおよびベンタミアナタバコ組織ではMAPキナーゼカスケード(MEK1,MAP1,PPS)が活性化され、その下流でオキシダティブバースト(OXB)を担うrbohB、ファイトアレキシン(PA)生合成系に関わるHMGやPVSが発現した。OXBの発生やPA生成・蓄積誘導がない親和性レースの感染でも、それぞれの遺伝子の発現は遜色なく誘導され、転写制御は親和・非親和に共通のエリシターが、翻訳後の活性制御は特異的エリシターまたは特異的サプレッサーが制御していると推定した。MAP1を不活性化するタンパク質脱リン酸化酵素のcDNAをクローニングし、その機能を確認した。常時活性状態に変換したMEK1^<DD>を発現させた組織では、OXBが発生しHR応答が起こった。この途中ではMAP1やSIPKの活性化も見られ、下流ではrbohBやHMG、PVS等の発現が誘導された。MEK1^<DD>を発現させてもrbohBをジーンサイレンシングした葉組織ではHR応答が抑制された。なお、PVS3プロモーターを連結したStMER1^<DD>で形質転換した疫病耐性ジャガイモは、ジャガイモ夏疫病菌およびErwinia carotovoraに対しても耐病性を示した。
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