耐病性シグナル伝達経路の解明

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12052217
• 研究機関: 横浜国立大学
• 研究代表者: 平塚 和之 横浜国立大学, 大学院・環境情報研究院, 教授 (30202279)
• 研究分担者: 進士 秀明 産業技術総合研究所, 分子細胞工学研究部門・遺伝子機能制御グループ, グループ長
• キーワード: 耐病性 / シグナル伝達 / エリシター / 転写制御

研究概要

PR1aプロモーターの転写制御に関与すると考えられる転写因子の特徴付けを試み、PR1aプロモーターに結合活性を示すと考えられるシロイヌナズナ由来の新規なDNA結合タンパク質を同定し、それらの性状について調べた。具体的には、光応答性遺伝子発現制御に関与するシス制御配列に結合する転写制御因子として同定されたtrihelix型DNA結合タンパク質であるGT-1と類似したDNA結合活性を示す新たな因子としてGT-4とGT-5を見出した。また、それらのDNA結合活性はGT-1と同様、リン酸化により制御されることが示唆された。これらの結果は、光情報伝達系とPR1a遺伝子の発現誘導が密接に関係するというこれまで得られている知見と関連しており、興味深い。今後は、NPR1/NIM1、TGA因子群、myb様因子群などのPR遺伝子発現制御に関与することが示されている既知の転写制御因子群との関係についても調べることを計画しているが、昨年度までに開発した遺伝子銃を用いた一過性発現系によるアッセイ系を有効に活用し、転写因子間の相互作用について検討する予定である(平塚)。
タバコのクラスIキチナーゼ遺伝子の発現制御領域に存在するGCC boxとTGAC配列を含むW boxがエリシター応答性のシスエレメントとして機能することを明らかにし、これらのDNAエレメントに結合する転写制御因子ERFとNtWRKYの遺伝子のエリシターに応答した発現様式について解析した。
ERFとNtWRKYの転写活性化機能を解析するため、ERFとNtWRKYを酵母のGAL4のDNA結合ドメインと融合した遺伝子を作成し、GAL4応答性のレポーター遺伝子とともにタバコ培養細胞で一過的に発現させることにより解析した。ERF2の転写活性はエリシター処理によりさらに増加することが示唆された。転写因子を過剰発現あるいは条件的に発現させる形質転換植物を作成し、機能解析を行っている(進士)。

研究成果

• [文献書誌] 渡壁百合子, 小野祥子. 平塚和之: "形質転換植物を用いた抵抗性誘導剤の作用機作解析"日本農薬学会誌. 26. 296-299 (2001)
• [文献書誌] Mtsuo, N., Minami, M., Maeda, T., Hiratsuka, K.: "Dual luciferase assay for monitoring transient gene expression in higher plants"Plant Biotechnology. 18. 71-75 (2001)
• [文献書誌] Murata, J., Takase, H., Hiratsuka, K.: "Characterization of a novel GT-box binding protein from Arabidopsis"Plant Biotechnology. (in press).
• [文献書誌] M.Ohta, K.Matsui, K.Hiratsu, H.Shinshi, M.Ohme-Takagi: "Repression Domains of Class II ERF Transcriptional Repressors Share Essential Motif for Active Repression"Plant Cell. 13. 1959-1968 (2001)
• [文献書誌] T.Nishiuchi, K.Suzuki, S.Kitajima, F.Sato, H.Shinshi: "Wounding Activates Immediate Early Transcription of Genes for EREs in Tobacco Plants"Plant Mol.Biol.. (in press).
• [文献書誌] 鈴木馨, 進士秀明: "エリシターシグナルの伝達と防御遺伝子発現"化学と生物. 40. 686-694 (2002)
• [文献書誌] 高木優, 進士秀明: "植物ゲノム機能のダイナミズム"岩淵雅樹, 篠崎一雄(編)シュプリンガーフェアラーク東京. 99-100, 101-108 (2001)