耐病性シグナル伝達経路の解明

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12052217
• 研究機関: 横浜国立大学
• 研究代表者: 平塚 和之 横浜国立大学, 大学院・環境情報研究院, 教授 (30202279)
• 研究分担者: 進士 秀明 産業技術総合研究所, 生物機能工学研究部門, 研究グループ長 (40357249)
• キーワード: 耐病性 / 転写制御 / プロモーター / 誘導抵抗性 / PR-1a / エリシター

研究概要

高等植物の生殖器官には各種の防御遺伝子が高レベルで発現しており、その他の器官・組織とは異なる独特の防御機構を備えていると考えられる。実際にPR-1a遺伝子等の病害応答性プロモーターは生殖細胞で恒常的に高発現することが判明している。これまでに、生殖細胞特異的に発現するプロモーターの単離と、その特異的発現に関与すると考えられる制御因子として新規なGRASタンパク質LlSCLを見出し、その性状について詳しく調べた。LlSCLは極めて強力な転写活性化領域を有する核局在性を示すタンパク質で、生殖細胞においてのみ組織特異的なプロモーターに対して転写活性化因子として作用することが明らかとなった。生殖細胞以外の器官・組織における病害の応答性プロモーターに対する作用等に関して現在検討中である。また、PR-1a遺伝子プロモーターを利用した抵抗性誘導剤め評価・スクリーニング系をタバコ培養細胞、タバコ植物体、シロイヌナズナにおいて構築し、それらが有効に機能しうることを示した。さらに、高度化・高性能化を目的として、異なる情報伝達系により活性化される複数の病害応答性プロモーターを用いた系の構築に着手した。具体的には、複数の異なる情報伝達経路により制御される環境応答・防御応答関連遺伝子の発現制御領域にルシフェラーゼ遺伝子を連結して植物体に導入し、それらの発現制御様式に関する知見を得た。それらを利用した、抵抗性誘導活性を示す化合物に対する応答状況を複数の防御応答遺伝子のin vivo発現解析により評価することが可能なシステムの開発に応用可能である。一方、シロイヌナズナ培養細胞と植物体を用いたエリシター応答の実験系を確立し、シロイヌナズナのアクティベーションタグラインに対してエリシター処理しても成長が抑制されない変異体のスクリーニングを行った。これまでに1000系統以上の選抜を行い、明瞭な表現型を示す株RF2を得た。これについてプラスミドレスキュー法によるT-DNA挿入部位の同定を行った。

研究成果

• [文献書誌] Maeda, T., Watakabe, Y., Seo, S., Takase, H., Hiratsuka, K.: "Expression of the AtRAD51 gene promoter in response to DNA damage in transgenic tobacco."Plant Biotechnol.. 21(in press). (2004)
• [文献書誌] Ono, S., Tanaka, T., Watakabe, Y., Hiratsuka, K.: "Transient assay system for the analysis of PR-1a gene promoter in tobacco BY-2 cells."Biosci.Biotechnol.Biochem.. 68(in press). (2004)
• [文献書誌] Morohashi, K., Minami, M., Takase, H., Hotta, Y., Hiratsuka, K.: "Isolation and characterization of a novel GRAS gene that regulates meiosis-associated gene expression."J.Biol.Chem.. 278. 20865-20873 (2003)
• [文献書誌] Bayamaa, G., Morohashi, K., Takase, H., Hiratsuka, K.: "Identification of novel microsporogenesis-associated genes encoding proteins with a nuclear localization signal."Plant Biotechnol.. 20. 137-143 (2003)
• [文献書誌] 平塚和之: "遺伝子組み替え植物の光と影II"学会出版センター. 253 (2003)