研究概要 |
1)植物細胞壁/アポブラストにおける防御応答とタンパク分子 分離細胞壁画分にはエリシター応答性のperoxidase(POX)依存性の活性酸素生成系が存在すること、またしエリシター応答性のdiamineoxidase(DAO)の存在も判明した。DAOは、プトレシンを酸化してH2O2、NH3、ピロリンを生成する。このうち、ピロリンは感染阻害作用を示すことが明らかとなった。NTPaseはポリアミン類によって負に制御され、一方、DAO活性は、NTPaseの代謝産物で正に制御されることから、NTPase-DAOを介する防御システムの存在が示唆される。以上のように、感染過程の極初期における細胞表層での防御応答に植物細胞壁/アポプラスト独自の代謝系が深く関わっていることが判ってきた。エンドウアポプラスト液には、LOX, DAO, glycinehydroxymethyl transferase MDHA-reductase, fructose bisphosphate aldorase, isoflavanone reductase, germin-like protein, SOD等のホモログが存在することが判明した。このアポプラスト液にγ32P-ATPを与えてリン酸化タンパク質を調べた結果、native PAGEで的62kDa, SDS-PAGEで約17kDaタンパク質がリン酸化されることが判明した。アミノ酸配列を解析した結果、この分子はCu/Zn SO-Dであることが判った。アポプラスト液中の本活性とリン酸化はエリシターで上昇しサプレッサーで阻害され、病原菌シグナルに応答することが明らかになった。 2)病原菌の宿主認識と感染への形態形成 ウリ類炭そ病菌のMAPキナーゼCMK1の制御下にあると推定される転写因子CST1の機能解析を行った。CST1破壊株は野生株様の付着器を形成したが、付着器細胞内の脂肪顆粒の形状が野生型株と異なり、侵入菌糸系性能を欠損していた。このことからCST1はウリ類炭そ病菌の侵入菌糸形成に必須であり、これに脂肪代謝が関与している可能性が示唆された。一方、病原性に関連する遺伝子の網羅的探索を目的としてアグロバクウムによるウリ類炭そ病菌の形質転換および遺伝子破壊実験系を確立した。糸状菌形質転換用のバイナリーベクターを導入したアグロバクテリウムと炭そ病菌の胞子を混合培養することにより効率的に形質転換株を取得することに成功した。得られた形質転換株の病原性検定により複数の機能欠変異株を同定し、それらのT-DNA挿入ゲノム領域の回収と相補実験により新たな病原性遺伝子の同定に成功した。
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