研究課題/領域番号 |
12053224
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
澁木 克栄 新潟大学, 脳研究所, 教授 (40146163)
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研究分担者 |
菱田 竜一 新潟大学, 脳研究所, 助手 (90313551)
工藤 雅治 新潟大学, 脳研究所, 助教授 (80153310)
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キーワード | 行動解析 / フラビン蛋白 / 体性感覚野 / スキナー箱 / 脳機能イメージング / 振動覚 / 報酬 / ラット |
研究概要 |
今年度は主に大脳皮質体性感覚野におけるシナプス可塑性が、体性感覚情報の弁別学習にどのような役割を果たすかを研究した。スキナー箱の床の振動数(20又は40ヘルツ)を弁別する体性感覚弁別テストを開発した。飲水制限したラットをスキナー箱で3-5日間訓練すると、最初は報酬(水)がもらえる振動数(20又は40ヘルツ、動物ごとに異なる)の床振動(S+)に対しても、報酬がもらえない対照振動数(40又は20ヘルツ)の床振動(S-)に対しても等しく飲水行動を示したが、訓練期間中にS-に対する飲水行動の頻度が徐々に減少し、最終的にS+に対しては飲水行動で応ずるがS-は無視するようになった。即ち、弁別学習は、S-に対する飲水行動が抑圧されることによって成立した。このような弁別学習を習得済みの動物を麻酔し、記録側と対側の後肢の振動刺激(40又は20ヘルツ)に対する体性感覚野の応答をフラビン蛋白蛍光による脳機能イメージングで解析した。その結果、調べた8匹のラット全てにおいて報酬と連合させた刺激(S+)に対する体性感覚野の反応が対照刺激(S-)に対する反応より大きいことが判った。S+とS-に対する感覚野応答の差は、S+に対する応答の増強によって生ずるか、S-に対する応答の抑圧によって生ずるか、二つの可能性がある。そこでナイーブなラットの体性感覚野の応答と、弁別学習を習得済みの動物の応答をフラビン蛋白蛍光法で比較したところ、S-に対する応答の抑圧が特異的に生じていることが判った。この結果は、行動実験においてS-を省略すると、体性感覚野の応答に有意な差が生じないという対照実験の結果とも合致する。S-に対する体性感覚野の応答を抑圧するという可塑性は、S-に対する飲水行動を抑圧するという弁別学習において中心的なシナプス機構の一部であると思われる。
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