研究課題/領域番号 |
12053228
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小松 由紀夫 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (90135343)
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研究分担者 |
吉村 由美子 名古屋大学, 環境医学研究所, 助手 (10291907)
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キーワード | 抑制性シナプス / 長期増強 / 長期抑圧 / GABA_A受容体 / NMDA受容体 / エンドサイトーシス / 視覚野 / Ca^<2+>チャネル |
研究概要 |
1、大脳皮質視覚野においてシナプス可塑性は視覚反応性の経験依存的発達に寄与すると考えられている。視覚野錐体細胞では、抑制性シナプスにNMDA受容体あるいはCa^<2+>チャネルに依存する長期抑圧が生じることをすでに報告している。本年度は、後者のタイプの長期抑圧の発現機構を解析した。 2、発達期のラット視覚野の切片標本において、5層の錐体細胞からパッチ電極でホール・セル記録した。薬理学的に興奮性シナプス伝達をブロックし、4層の電気刺激により誘発される抑制性シナプス後電流(IPSC)を記録し、-70mVから0mVへの20msの脱分極パルスを20Hzで繰り返し与えて可塑的変化を誘発した。 3、脱分極パルス後IPSCには、約半数の細胞で長期抑圧が、約1/5の細胞で長期増強が生じ、残りの細胞では変化がなかった。これらの変化は、パッチ電極にCa^<2+>キレータBAPTAを入れると抑えられたので、Ca^<2+>チャネル活性化により細胞内Ca^<2+>濃度が上昇すると発生すると考えられる。脱分極パルスを与えると、細胞体のGABA応答には常に長期抑圧が生じたが、樹状突起のGABA応答には長期抑圧と長期増強がほぼ同じ頻度で発生した。この結果は、細胞体の抑制性シナプスには長期抑圧だけが、樹状突起の抑制性シナプスにはどちらも生じることを示唆する。 4、IPSCの長期抑圧発現にGABA_A受容体のインターナリゼーションが関与するか検討した。GABA_A受容体のクラスリン依存性エンドサイトーシスにはamphiphysinとGTPaseのdynaminの相互作用が必要である。この相互作用を特異的に阻害するペプチドをパッチ電極からシナプス後細胞内に加えると、長期抑圧の発生は抑制された。またGTPaseの阻害剤GDPβSも同様に長期抑圧を抑えた。したがって、GABA_A受容体のインターナリゼーションが長期抑圧の発現に寄与すると考えられる。
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