研究概要 |
線虫C.elegansの温度受容シグナル伝達経路に関与する分子が新規に同定され、温度走性神経回路に関する知見が新たに見い出された。まず、nPKC-epsilonの哺乳類のホモログであるTTX-4/PKCは、一連の分子遺伝学的実験と、DAGと同様にPKCを活性化する薬剤であるTPAを用いた実験の両方によって、AFD温度受容ニューロンの活性を負に制御する因子として機能していることがわかった(Okochi et al.,投稿準備中)。また、好冷性温度走性異常を起こすttx-6(nj8)の原因遺伝子をクローニングした結果、既に同定されていたeat-16遺伝子と同一であり、RGS (Regulators of G protein Signaling)ホモログをコードしていた(Okumura et. al.,投稿準備中)。詳細な分子遺伝学的解析の結果、EAT-16/RGSは、従来まで嗅覚ニューロンとして解析が進んでいたAWC感覚ニューロンで機能していることが判明し、AWCニューロンが温度受容にも関与していることが初めて明らかになった。RGSは、GαのGTPase活性を上昇させて活性型Gαから不活性型Gαへの移行を促進ことによって、Gαの活性を負に制御する因子である。我々は、AWCで発現している様々なGαの欠失変異とeat-16欠失変異の2重変異体を作成して温度走性を解析することにより、AWCにおけるEAT-16/RGSのターゲットであるGαを予測した。さらに、eat-16欠失変異体のAWCをレーザー照射で殺傷する実験などを行った結果より、Mori and Ohshima(1995)による温度走性の神経回路モデル上で想定されていた未同定の温度受容温度受容ニューロンXの正体がAWCである事が強く示唆された。
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