研究課題/領域番号 |
12053233
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大森 治紀 京都大学, 医学研究科, 教授 (30126015)
|
研究分担者 |
石井 孝広 京都大学, 医学研究科, 助手 (40303812)
古谷野 好 京都大学, 医学研究科, 助教授 (50183041)
|
キーワード | 特徴抽出 / 音源定位 / 層状核 / MNTB / 同時検出 / シナプス / lh電流 |
研究概要 |
特徴抽出神経回路の成熟に関わる2つの所見を明らかにした。第1は聴覚中継核シナプス伝達の成熟機構である。MNTBは対側の蝸牛神経核からの入力を受け抑制性の出力として同側のLS0に出力し、音源定位に関与する神経核である。ラットのMNTBシナプスでは生後間もない時期には多数の非同期のmEPSCがEPSCに引き続いて起るが、個体発達過程で伝達物質放出が同期化しmEPSCが消失し大きな速いEPSCが発生するようになる。シナプス前終末ではこの間Ca2+電流が増加し、Ca2+の除去機構が発達する。こうしたCa2+流入量の増大とCa2+除去機構の発達はシナプス前終末に特異的であり、シナプス後細胞では顕著な変化は生じなかった。さらに上記Ca2+流入と除去機構の関与を成熟した個体のシナプスで再現した。すなわちCa2+除去能力を落とし、Ca2+流入量を減らす実験を行い幼若個体のシナプスにおけるのと同じ非同期のmEPSCが発生することを示した。第2はヒヨコ層状核における同時検出機構の成熟である。このシナプスはトリにおける音源定位回路の最初のシナプスであり、同時検出精度の達成に重要な働きをすることが知られている。ヒヨコ胚と生後で層状核シナプスの同時検出機能を比較したところ、孵化の前後で4msecから1msecに検出能力が向上した。この間、層状核神経細胞へのシナプス伝達自体には大きな変化はなく、一方シナプス後細胞である層状核神経細胞ではlh電流および低閾値K+電流が増大した。その結果、神経細胞の膜時定数が減少しEPSPの時間経過が短縮し、活動電位発射の閾値が低下した。 こうした2つの結果は、聴覚、特に音源定位機構の発達にはK+チャネル、lhチャネルなどのシナプス後細胞でのイオンチャネルの量的な発達およびシナプス前終末でのCa2+チャネルおよびCa2+除去に関わる細胞内代謝系の発達が重要であること。すなわちシナプスの前後の要素が同時に発達することによって特徴抽出回路の発達が実現されることを示す。
|