研究課題/領域番号 |
12053233
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大森 治紀 京都大学, 医学研究科, 教授 (30126015)
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研究分担者 |
石井 孝広 京都大学, 医学研究科, 助手 (40303812)
古谷野 好 京都大学, 医学研究科, 助教授 (50183041)
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キーワード | 聴覚 / 神経回路 / 音源定位 / 同時検出 / 低闘値K電流 / H電流 |
研究概要 |
音源定位は聴覚を利用した動物行動において、非常に重要な機能である。特に発達した音源定位能力を備えた面フクロウおよび人では時間差にして5-10μsecの音波のズレを左右の耳間の時間差として検出することができる。1msec程度の持続時間を有する活動電位を情報処理の手段として用いる神経回路がどのようなメカニズムでさらに100倍精度の高い時間分解能を実現するのかは大きな謎であった。我々はヒヨコ脳幹スライス標本を用いて、左右の聴覚情報が最初に比較される層状核において同時検出機構・精度の極限値を推定した。音源定位の基本的な機構である同時検出の精度は層状核神経細胞で記録されるEPSPの時間経過に比例し、EPSPの短縮に伴い同時検出精度は向上する事を明らかにした。さらに、生後発達に伴いEPSPは加速された。EPSPの時間経過は低閾値で活性化されるKチャネルに影響を受け、わずかに静止膜電位より脱分極した電位ではEPSPは後過分極を示し発生源であるEPSCよりも高速化した。更にシナプス電流の要素であるmEPSCの時間経過との比較からEPSP時間経過の極限値が0.25msecと推定できた。先に述べたEPSPおよび同時検出精度の比例関係から、EPSPの極限値に対応する同時検出精度の極限値は0.15msecであった。これは面フクロウの層状核で報告されている同時検出の精度とほぼ同一である。したがって、優れた音源定位能力を持つ人あるいは面フクロウの聴覚もシナプス電流の同期化の進展および低閾値型K電流の活性化により実現されている可能性が明らかになった。
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