研究概要 |
硬骨魚(キンギョ,ゼブラフィッシュ)の後脳に存在し,逃避運動をトリガーするマウスナー(M)細胞とその相同ニューロンを研究対象として以下の成果を得た. (1)抑制性シナプス応答の生体内イメージング 抑制性シナプス応答を初めて生体内で光学計測した.M細胞の活動電位は抑制性シナプスコンダクタンスにより振幅が減少することに着目し,抑制性シナプス入力によるゼブラフィッシュM細胞の活動電位の減衰を共焦点レーザー顕微鏡でカルシウム・イメージングした.光学計測の結果は,M細胞のホールセル記録で電気生理学的に検証した.研究成果はJournal of Neuroscience(2002)に発表した.さらにこの方法を用いて,抑制性シナプス応答の長期増強をも光学計測することに成功した. (2)逃避運動と脳ニューロン活動の同時計測システム 逃避運動中のゼブラフィッシュからニューロン活動と運動を同時に記録するために,共焦点レーザー顕微鏡と光学顕微鏡を上下に組み合わせた光学計測システムを新たに開発した.2つの顕微鏡間で光の干渉が起こらないように工夫し,瞬時に起こるゼブラフィッシュの逃避運動を高感度高速ビデオカメラ(2ms/frame)で記録しつつ,複数の後脳ニューロンの活動を計測できるように設計した. (3)後脳分節間相同ニューロンの機能分化と機能結合 M細胞は後脳に7つの分節を形成して存在する網様体脊髄路(RS)ニューロンのひとつである.M細胞と形態学的に相同なRSニューロンの中で,M細胞だけが単一の活動電位を発生すること,聴神経から入力はM細胞と相同ニューロンを含む分節に限局して投射すること,およびM細胞から相同RSニューロンへ分節構造と形態学的相同性を反映した投射様式があることを,キンギョを用いた電気生理学的・形態学的実験によって見出した(論文投稿中).
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