研究概要 |
硬骨魚の後脳に存在する網様体脊髄路(RS)ニューロン群が分節をなし,形態学的に相同なニューロンが隣接する分節に繰り返されている点に着目し,それら相同ニューロンの機能的分化を調べた. 1.キンギョの後脳の第4-6分節に相同RSニューロンへの聴覚神経の投射を蛍光色素を用いて形態学的に調べ,分節に対応した投射を見出した.さらに,RSニューロンの細胞内記録から,聴覚神経がRSニューロンに直接シナプス結合していると考えた. 2.第4-6分節の相同RSニューロンは,聴神経から同じような投射を受けながら,著しく異なる発火特性を示すことを細胞内記録から見出した.すなわち,第5-6分節のMiD2cmとMiD3cmは脱分極に対して定常的に連続発火するのに対して,第4分節のマウスナー(M)細胞は,脱分極の開始時に単発の活動電位しか発生しない.チャネル阻害剤の効果から,M細胞の特異的な発火パターンは,M細胞のデンドロトキシン感受性カリウムチャネルと反回性抑制回路によって生じることを明らかにした.また,デンドロトキシン感受性カリウムチャネルのサブユニット(Kv1.2)の抗体を用いて免疫組織学的に調べると,M細胞のみがKv1.2を特異的に発現していることが示された.これらの相同RSニューロンに見られた機能分化は,魚の逃避運動の多様な制御に寄与すると考えられる. 上記の結果は,Journal of Neuroscienceに発表される(印刷中).
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