研究概要 |
哺乳類の体内時計は視交叉上核にあり、この核において、時計遺伝子群が約24時間周期で増減をくり返すことによって時を刻んでいる。我々は、時計遺伝子mPer1のプロモーター領域に、昼間は活性型の転写因子DBP、HLF、TEFが結合し転写活性を高め(Mol Cell Biol,2000)、夜になると同じ結合部位に、抑制型の転写因子E4BP4が結合して転写を抑えるという、極めて巧妙なメカニズムが存在することを明らかにした(Genes Dev,印刷中)。このメカニズムは、mPer1 mRNAの発現の振幅を大きくしていると考えられるが、このことを生体内で実証するため、E4BP4のmRNAを視交叉上核で過剰発現するトランスジェニックマウスの作成を試みた。そのためには視交叉上核で十分に発現させることのできるプロモーターが必要であった。我々は、時計遺伝子mPer1のプロモーター領域にルシフェラーゼをつないだトランスジェニックマウスを作成し、mPer1遺伝子の5'上流7.2kbの領域が視交叉上核で周期的な発現をするのに十分な領域であることを明らかにし(Curr Biol,2000)、このトランスジェニックマウスの視交叉上核が、mPer1 mRNAの発現パターンと一致して発光することを示した(Nature,2001)。したがって、mPer1遺伝子の5'上流7.2kbのDNAは、この目的にふさわしいプロモーターである。mPer1プロモーターにUAS及びGAL4をつなぎ視交叉上核でGAL4が過剰発現するトランスジェニックマウスと、UASにE4BP4をつなぎGAL4存在下でE4BP4が過剰発現するトランスジェニックマウスを現在作成しており、行動リズム、既知の時計遺伝子の発現パターンを解析する予定である。
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