研究概要 |
神経系の高度な機能は神経細胞の多様性に依存している.我々は,ショウジョウバエ複眼において光受容神経細胞のタイプを決定する遺伝的スイッチとして働く核内リセプター Seven-up の解析を中心に,神経細胞が特定のニューロンへと得意化される分子機構を解析している. Seven-up がどのようにして標的遺伝子を転写制御し,どのような下流因子を動かすことで特定のニューロンとしての分化を引き起こすことができるのかについて調べるために,Seven-up の標的遺伝子の探索を行った.Seven-up のリガンド結合ドメインは転写抑制活性を持つことが知られているため,Differential Display 法を用いて seven-up 遺伝子の機能欠失時に発現量が上昇する遺伝子を検索した.その結果,現在までに 53 の候補遺伝子が得られ,Seven-up の下流で転写因子や細胞骨格分子,細胞接着分子など様々な分子が機能することが示唆された.現在,その発現量の変化を発生中の複眼成虫原基で確認し,Seven-up の直接の標的遺伝子をしぼりこんでいる.また,Seven-up 遺伝子は胚中枢神経系のニューロン前駆細胞の一部でも発現しているため,今年度より seven-up 機能欠失変異体の中枢神経系の症状解析も開始した.
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