研究概要 |
上丘中間層ニューロンからwhole cell記録し、浅層を刺激して誘発されるEPSPはbicucullineの投与で数百ミリ秒から1秒を超えて持続する。この持続性EPSPは閾値付近ではall or noneに起きる。そして浅層ニューロンでは見られないことから中間層には浅層に見られない非線形的活性化機構があり、これが中間層における運動出力の形成に関与することが示唆された。この持続性脱分極はNMDA型グルタミン酸受容体依存性であり、中間層ニューロンの個々の細胞の膜特性が入出力関係において線形的でも見られることから個々のニューロンのintrinsic propertyによるのではなく、神経回路レベルで実現されることが明らかになった。そこでこの神経機構を明らかにするために中間層の近接するニューロンから同時にwhole cell記録を行い、外液にbicucullineを投与し、Mg^<2+>濃度を低下させると2個のニューロンは自発的に同期して脱分極して発火を繰り返すことが観察された。このことは中間層ニューロン群は興奮性結合するニューロン集団によって形成されており、GABAによる抑制から脱抑制することで同期して興奮する機構があることが明らかになった。この同期的脱分極はAPVを投与すると完全に消失することからNMDA型グルタミン酸受容体依存性だった。そしてニューロン間の距離を離していくと同期性がどのように変化するかを調べたところ、同期性の程度は距離とともに減弱し1mm以上離れるとほとんど同期性が見られなくなることが明らかになった(Saito & Isa, in preparation)。また近接するニューロンペアで興奮性シナプス結合するものを見出し、現在解析を進めている。
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