研究概要 |
誘導型シクロオキシゲナーゼCOX-2(アラキドン酸からプロスタグランジンG2/H2を合成する酵素)が、神経活動によって脳内で発現調節されることを既に報告している(Neuron,1993)。さらに、COX-2がけいれん発作や発熱、一過性脳虚血発作などによって誘導されることも報告してきた(Brain Res 1995,1996a,1996b,Am J Physiol 1997,Mol Brain Res 1998)。平成12年度は、プロスタグランジン合成の下流に位置するPGE2合成酵素の解析を行った。PGE2の脳での産生部位を明らかにするため、ラットのPGE合成酵素(mPGES)のDNAをクローニングし、脳内での発現をin situ hybridization、Northern解析を用いて解析した。その結果、電撃けいれん刺激によってmPGES mRNAは神経細胞ではなく、脳の血管内皮細胞で誘導されることが明らかになった。さらに、細菌毒素のリポ多糖(LPS)によって発熱を誘発した時には、COX-2とmPGESが同じ血管内皮細胞で誘導され、両酵素が核膜に局在した。また、COX-2特異的阻害剤を注射するとLPSによるPGE2の産生と発熱が完全に抑えられた。以上の結果から、「LPSによってIL-1やIL-6、TNF-αが誘導され、脳の血管内皮細胞の受容体に作用する。その結果、COX-2とmPGESが内皮細胞で誘導され、両者が連関して核膜でPGE2を産生する。そして、産生されたPGE2が脳の実質の方へ運ばれ、視床下部の体温調節中枢に作用し、発熱が生じる」という発熱に関する新しいモデルが考えられる。この成果は、現在J.Neurosci.に印刷中である。
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