研究概要 |
我々は、マイクロアレイ解析からFGF標的遺伝子として、Neurotrophin受容体様構造をもつp75/fullback/NRHファミリー因子(以後NRH)を同定し、FGFによる細胞表面のフィロポディア様突起形成にNRHが必要であることを見出している(ChungらDev.Biol., 2005)。NRHはRhoAの活性化を介してJNKの活性制御を行っており、非古典的Wnt経路とFGF経路がRhoAの活性化において統合されているものと考えている。さらに、新規因子の同定のために、発現クローニング法を用いて原腸形成の制御遺伝子の探索を行った。機能アッセイ系を構築し、時間・空間的な遺伝子発現プロフィール解析の情報から候補遺伝子を絞り込んだ。その結果、新規GAP (GTPase activating protein)、XGAPを原腸形成制御因子として同定した。モルフォリノ(MO)によるXGAPのノックダウンの結果、滑り込み運動、収斂と伸長運動の阻害を引き起こした。XGAPはArf (ADP-ribosylation factor)のGAP、すなわちArfGAPと類似した構造をとり、実際にARF6に結合し、そのGAPとして機能する。XGAPは紡錘形に極性化した細胞の両端に限局して存在することから、細胞の極性化に深く関わっているものと予想された。そこで、XGAPのヒト相同タンパク質を用いた免疫沈降法と微量マス解析によって、結合因子のスクリーニングを行った。その結果、線虫などで前後軸細胞極性の決定に必須の役割を担うPAR5(14-3-3ε)を同定した。そこで、頂低極性の形成に必須のPARタンパク質との物理的相互作用について検討したところPKC1,PAR1,PAR6と結合することが明らかになった。また、これらの因子は極性化によって紡錘形となった中胚葉細胞の両端に局在するが、特異的MOによるXGAPのノックダウンによって、局在性を失い、また形態上の極性も消失することが明らかとなった。このことは、PARタンパク質複合体が細胞極性に必要であり、その複合体形成および維持にXGAPが不可欠であることを意味している。さらに、PKCλはXGAPをリン酸化し、XGAPと14-3-3εとの結合を強めることも明らかとなり、極性形成の新しいプレーヤーとしてのXGAPの機能が解明されつつある(論文投稿中)。
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