研究分担者 |
須賀 晃一 早稲田大学, 政治経済学部, 教授 (00171116)
西沢 保 一橋大学, 経済研究所, 教授 (10164550)
堀 元 東北大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (90004209)
森村 進 一橋大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (40134431)
蓼沼 宏一 一橋大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (50227112)
|
研究概要 |
平成14年度の研究によって,人格の非同一性問題を無視できない長期の論脈で世代間衡平性の問題を議論する理論的枠組みを構成する作業は,かなりの前進を達成した。特に,帰結主義的評価と非帰結主義的評価を同一の理論的枠組みの中で比較・対照して,その各々を公理主義的に特徴付けた研究成果は,一層の拡張を達成した後継論文も含めて,学会のフロンティアを開拓した基礎的成果となっているこの作業と平行して,二項関係の新たな連続的拡張定理の確立に成功したことを始めとして,当初は計画に含まれていなかった重要な成果を得たことも,これまでの研究の積極的成果として,記録に留めておきたい。また,京都議定書の合意プロセスとその内容に関する具体的検討も進み,理論的結果の具体的適用に際して念頭に置くべき制約と論脈に関する共通理解を深めることができた。さらに,現在世代と遠い将来世代の間の衡平性の問題に限定せずに,隣接世代間および重複世代間の衡平性の問題を検討作業に含めて,シジウィック=ピグー=ラムゼー以降の厚生経済学の伝統の中に2つのCambridge Traditionsを発掘して,それぞれの伝統に連なる厚生経済学の発展と現状に関してOverviewを行うことができた。この作業に基づいて,厚生主義的な情報的基礎を活用する世代間衡平性概念の構成と検討作業を開始したが,この研究は年金を巡る世代間利害対立という論脈において,重要な意義を持つことになると考えている。法哲学者,経済哲学者と経済学者とのインターフェイスを確立する試みは,このプロジェクトの当初から重視してきた特徴である。が,個々の研究報告に関する積極的な討議から双方が稗益する点は多いものの,共同研究の成果として完成した作業は今後の一層の努力に待たなければならない。
|