研究分担者 |
須賀 晃一 早稲田大学, 政治経済学部, 教授 (00171116)
西沢 保 一橋大学, 経済研究所, 教授 (10164550)
堀 元 創価大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (90004209)
森村 進 一橋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (40134431)
蓼沼 宏一 一橋大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (50227112)
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研究概要 |
今年度の研究は2つの線に添って大きな成果を挙げることができた。研究の第1の線は将来世代の効用を割り引く慣行を巡る論争に関わっている。功利主義者シジウイックと厚生経済学者ピグーは,誕生の前後関係だけで異なる世代を差別的に処遇する伝統を強く批判して周知の《匿名性の公理》を提唱したが,1960年代に公刊されたダイアモンド論文は《匿名性の公理》・《連続性の公理》・《パレート原理》を満足する無限効用流列の評価原理は存在しないという不可能性定理を論証して,学界に波紋を広げた。だが,《匿名性の公理》は手続き的衡平性に関わる非厚生主義的な要請でありパレート原理は典型的な厚生主義的な要請である。連続性を維持しつつ,これら異質の2公理を満足することは不可能だという命題は,驚く程のものではない。我々は,パレート原理と同じく厚生主義的な帰結に関する衡平性の公理を導入して,連続性を維持しつつ,これら同質的な2公理を満足することは不可能だという命題を論証して無限効用流列の評価原理に関する研究に新基軸をもたらしたのである。この研究の延長線上で,現在様々な評価原理を公理化する研究を推進しつつある。研究の第2の線は、厚生主義的伝統を離れて、非厚生主義的ないし非帰結主義的な評価原理を公理化する研究方向である。この研究の端緒を開いたのは,実は我々自身の研究だった。今年度は初年度に挙げた業績を一般化して,非帰結主義的評価原理の構造をさらこ明らかにすることができた。 また,このプロジェクトの初年度からの伝統を継承して,今年度もこれらの成果を中軸とする国際コンファレンスを開催して,Joaquim Silvestre, Geir Asheimなど分野の専門家と,実り多い研究交流を行った。プロジェクト最終年度となる来年度には,彼らを巻き込んだ円卓会議を開催する計画が具体化しつつある。
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