研究概要 |
林班は,マクロデータの整備と,金融・財政政策に関する理論文献のサーベイを行った。林は,今年度大幅に改定された国民所得統計をデータベースとして活用するための作業を行うとともに,金融政策に関する最近の文献を整理した。特に,1990年代の日本経済の不振が,銀行の金融仲介機能の低下によるものかどうかという論点に関する内外の文献を収集し,数ある諸説のうちいずれが日本経済に当てはまるのかを検討する作業をはじめた。ブラウンは塩路とともに,「構造自己回帰モデル(structural VAR)」という手法を用いて,予期せざる日本銀行の金融政策をデータから識別し,それが金利に与える影響を推定する作業に入った。塩路は,アメリカに長期研修中で,最近の計量経済の分析手法のサーベイを行っている。特に,「構造自己回帰モデルにおける識別」という論点に関する文献を収集するとともに,最近の手法が上述のブラウン・塩路が構築したモデルに適用できないかを検討中である。井堀は,財政赤字の持続可能性について理論・実証分析を進めた。とくに,地方交付税交付金を通じて,地方政府の公共事業の支出に関するインセンティブがどう影響されるかの分析を進めている。 また,Oxford大学のCoebett氏に来日してもらい,来年度9月に開催するNBER(全米経済研究所,National Bureau of Economic Research)と共催の日本経済コンファレンスの準備を進めるとともに,金融システムの研究について彼女の助言を受けた。
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