研究概要 |
林は,前年度までに行った研究(1990年代の停滞を供給サイド(もっと正確には,動学的一般均衡モデル)から説明する研究,ミネソタ連銀のプレスコット教授と共同研究)を拡張し,90年代初頭に起こった労働供給の長期的低下を効用関数から説明する作業を行った(これについては,総括班のホームページhttp://www2.e.u-tokyo.acjp/〜seidoから,制度の実証分析ディスカッションペーパー第17号としてダウンロードできる)。まら,この一連の研究を一般向けに解説した論文を執筆した(裏面の「図書」に記入してある雑誌に掲載,また制度の実証分析ディスカッションペーパー第18号)。さらに,同じ供給サイドのアプローチで戦前の生産性の停滞が説明できることを示す研究を進展させた。この研究の一応の成果は,経済学の国際学会であるEconometric Societyの2003年のオーストラリア学会で招待講演として発表した。 塩路とブラウンは,前年度までに行った研究は学術雑誌に投稿されたが,編集者からの改訂の要請に応じるため,追加的な計量分析をおこなった。林・プレスコットの供給サイドの分析によると,生産性の上昇と労働時間は短期的には正の相関を持つはずだが,それがデータで支持されるかという点について,塩路は実証分析を開始した。 宮川は。1990年代以降の,日本経済の長期停滞の要因を解明する分析をデータ作成及び実証分析両面から行った。データ作成の面では,石川班の深尾一橋大学教授他と共同で,JIPデータベースを作成・公表した。JIPデータベースは,1970年から98年までの,日本の84産業の生産面でのデータを整備したものである。さらにこのデータから得られる日本経済の成長要因分解とJorgenson Haravrd大学教授達との共同研究の成果との比較を,Jorgenson教授も参加した内閣府経済社会総合研究所の国際フォーラムで,深尾一橋大学教授とともに報告した。実証分析では,90年代に米国に遅れをとったといわれるIT投資の決定要因について,JIPデータベースを利用して分析した。この結果は日本経済学会春季大会で報告され,内閣府経済社会総合研究所のDiscussion Paperにまとめられている。またIT資本が,生産性にどのような影響を与えるかという実証分析も行った(学術雑誌(次項参照)に掲載予定)。
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